円形劇場と剣闘士競技について |
| ◆円形劇場での興行 |
庶民の娯楽であった興行(ムネラ)は、劇場や円形劇場で多く提供された。円形劇場では、剣闘士競技(ルディ・グラディアトリ)を始めとして、曲芸やアクロバット、手品なども行われていた。
剣闘士競技では、剣闘士たちは二人一組で戦う。戦いが始まる前、剣闘士たちはロイヤル・ボックスの前まで来て、「死に赴かんとする我ら、皇帝にご挨拶つかまつる」と言うのがしきたりだった。そしてラッパの合図と共に戦いが始まり、戦いの最中も音楽が流されていた。
戦いに敗れた剣闘士は左手の親指を上げて命乞いをすることができた。この生死の決定は皇帝や観衆に委ねられており、例え負けても素晴らしい戦いをしたものには、「助けてやれ、放してやれ」(ミッテ)と叫ばれ、命を助けられた。そしてそうでないものには、「喉をかき切ってしまえ」(ユグラ)と叫ばれ、皇帝が親指を下に向けると敗者はとどめを刺された。そして、カロン(三途の川の渡し守)の格好をした係員によって、円形劇場の外に運び出された。
また、剣闘士同士の戦いだけではなく、猛獣狩り(ウェナティオーニス)や模擬海戦も行われた。猛獣狩りでは、長い間食事も与えられず、暗闇におかれちていた猛獣が解き放たれる。餓えて怒りに満ちた猛獣の殺戮が見世物になるのである。牡牛やサイを使った闘牛や、動物同士の戦いもあった。また、まったく武装していない人間が狩りをすることもある。その場合、人間は当然、猛獣に八つ裂きにされて餌食になってしまうのだった。見世物のセットは手が込んでいて、連れてこられた動物が生息していたところの雰囲気がさまざまに再現されていた。
模擬海戦では、アリーナに水を張り海に見立てて、その上に船を浮かべ、歴史上名高い海戦を再現した。
ほかの見世物としては、ペットショーや小人が孤を追いかける猛獣狩りのパロディーから、曲芸やアクロバット、手品、神話や歴史の挿話や英雄伝説を扱った芝居などがあった。
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| ◆剣闘士 |
当初、剣闘士はプロだけであったが、カリグラの発案により、重罪人や奴隷、戦争捕虜などのアマチュアが加わるようになった。こういった剣の訓練を積んでいない者が加わることにより、その残酷度はいっそう増した。最後まで生き延びることができた奴隷は、自由の身になって引退することが許され、自由の象徴である木の剣を与えられた。
しかしながら、この死と直面する危険な職業は高額な報酬を得られることより、自由民でありながらこの世界に身を投ずるものも少なくなかった。平均すれば1/3は職業として剣闘士を選んだ人々で占められていたのである。
剣闘士にはさまざまなタイプがあって、それに合わせて武器が用意され、技術も専門化していた。その名は出身地や使用する武器や戦い方で付けられていた。
○魚闘士(ムルミロ)
重装したムルミロの兜は、上に魚がかたどられており、ムルマと呼ばれていた。「魚」であるムルミロとそれを捕らえようとする「漁師」の網闘士とが組んで戦った。
○網闘士(レティアリウス)
唯一身を守るものとして、肩の上まで覆う金属製の籠手を、利き腕とは反対の左手につけていた。そして武器として長い三叉の鉾と、相手を捕らえるための投げ網を持っていた。網闘士は一般にムルミロと対戦した。
○追撃闘士(セクトル)
ひさしのついた兜をかぶり、盾と剣を持っていた。
○重装備闘士(オプロマクス)
重い甲冑を付けて戦った。
○獣闘士(ベスティアリイ)
猛獣と戦った。
○戦車闘士
古代ブリタニア人の格好をして、戦車に乗って戦った。
○トラキア剣闘士(トラクス)
新月刀と丸い小盾を持っていた。
○サムニウム剣闘士(サムニテス)
○プロウォカトル
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| ◆円形劇場の設備・構造 |
円形劇場の構造は、ギリシア劇場を2つ向かい合わせた構造と同様である。劇場にも見られるように、傾斜した地形を利用したものもあるが、多くはアーチや半円筒型の天井によって観客席が支えらていた。また、フランス北部やイギリスには、劇場に似た舞台壁を有する特殊な円形劇場も見られる。
各観客席はそれぞれ所属する市民階級ごとに仕切られており、各階級は入退場時に決して顔を合わせることがないよう別々の入口・階段が設けられていた。初期の円形劇場ではそのような階段は外側に見られるが、その後の円形劇場では外壁のアーチが入口の役割を果たし、内部の階段へとつながっている。
地下には舞台演出用の装置や、剣闘士や動物たちの待機所・通路が設けられており、その上に砂をまいた木の舞台(アレーナ)が置かれていた。また、最上席の外壁に設けられた突起により、観客席の上には陽射しや雨を遮る巨大な天幕(ヴェラリウム)が張られるなど、大がかりな設備を有する娯楽施設であった。
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